歌川広重の『東海道五十三次』と聞くと、「有名な浮世絵」「昔の街道の絵」というイメージを持っている人は多いかもしれません。
江戸時代に活躍した浮世絵師・歌川広重(うたがわひろしげ)の代表作である『東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)』は、江戸と京都を結んだ街道「東海道」にある53の宿場町と起点の日本橋、終点の三条大橋合わせて55作に及ぶ連作です。
あの絵がなぜここまで長く愛されているのか、考えたことはありますか。
実は『東海道五十三次』は、名所を並べただけの作品ではありません。
旅人の視線、歩いたからこそ見える景色、道中の空気感までが描かれている――だからこそ、現代の私たちが見ても「行ってみたい」と感じるのです。
この記事では、歌川広重が東海道を描いた理由から、『東海道五十三次』の特徴、そして実際に旅や街道歩きとどうつながるのかまでを、歴史が苦手な人にもわかりやすく紹介します。
歌川広重(うたがわひろしげ)とは?
歌川広重とは、江戸時代に活躍した浮世絵師です。美人画や役者絵が主流だった時代に、風景画を主役にした表現で人気を集めました。
1797(寛政9)年に江戸の八重洲で生まれました。火消の下級武士の家に生まれ、13歳で家督を継いでからは安藤重右衛門と名を改めます。15歳で歌川豊広の門下に入り、翌年に自分と師匠の名から1文字ずつ取って歌川広重となりました。
『東海道五十三次』のほかにも『江戸名所』シリーズや花鳥画、歴史画、春画など総2万点以上の作品を描いたとされています。
特に広重の特徴とされるのが、遠近感のある構図や、天候・季節による空気の変化を丁寧に描く点です。単なる名所案内ではなく、「その場に立ったときの感覚」を絵に落とし込んだと言われています。
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浮世絵『東海道五十三次』とは?
『東海道五十三次』は、江戸から京都までを結ぶ東海道の宿場を題材にした連作浮世絵です。江戸・日本橋を起点に、京都・三条大橋まで、道中の風景や人々の姿が描かれています。
描かれているのは、有名な名所だけではありません。渡し船を待つ旅人、雨に打たれながら歩く人、宿場で休む様子など、旅の途中にある「何気ない場面」が数多く登場します。
歌川広重『東海道五十三次』が描かれたのはいつ?
歌川広重の『東海道五十三次』が版行されたのは、1834(天保5)年、広重が37歳頃のこと。1832(天保3)年に公用で東海道を上った際に描き、翌年より発表したとされています。

ノミチちゃん
最近では「歌川広重は京都に行っていないのでは?」という説も有力視されているよ!
歌川広重『東海道五十三次』の順番は?
『東海道五十三次』の順番は江戸・日本橋を起点として品川宿が1番、大津宿が53番、終点が京都・三条大橋となっています。
描かれている場所は幕府公認の宿泊施設のある「宿場町(しゅくばまち)」周辺。
歌川広重『東海道五十三次』に見える「ヒロシゲブルー」
歌川広重が『東海道五十三次』から使い始めた“青”はのちに「ヒロシゲブルー(ジャパンブルー)」と評され、海外でも高い人気を誇ります。
実はこの青は「ベルリン藍(ベロ藍)」と呼ばれており、ドイツ・ベルリンから輸入されてきた化学染料でした。今まで使われていた植物由来の染料とは違い色落ちもせず、安価で濃淡も付けやすいという利点があったのだそう。
新居宿「渡舟ノ図」
京師「三條大橋」
なぜ『東海道五十三次』はこれほど人気になったのか
当時の人々にとっての「旅」と東海道
江戸時代、東海道は最も整備された街道でした。とはいえ、誰もが自由に旅できたわけではなく、旅は今よりもずっと特別な体験だったと考えられています。
実際に行けない人にとって、『東海道五十三次』は旅を疑似体験できる存在でした。絵を見ることで、「もし自分が歩いたら」という想像が広がったのです。
風景だけでなく人の営みを描いた点
広重の東海道が支持された理由のひとつに、人の存在があります。山や海だけでなく、旅人、駕籠かき、農作業をする人々などが自然に溶け込むように描かれています。
これにより、風景が「生きた場所」として感じられる。現代の私たちが見ても、単なる昔の絵ではなく、物語を感じる理由はここにあります。
『東海道五十三次』の構成と特徴
五十三次+起点・終点で全55図になる理由
歌川広重 「東海道五十三次 日本橋 朝之景」 (1833-1834)
歌川広重『東海道五十三次』内:京師「三條大橋」
作品名は「五十三次」ですが、実際には
江戸・日本橋
京都・三条大橋
を含めた全55図で構成されています。
これは、旅の始まりと終わりを強く意識した構成だと考えられています。ただ宿場を並べるのではなく、「道を歩く流れ」そのものを作品化した点が特徴です。
雨・雪・風など自然表現の巧みさ
歌川広重『東海道五十三次』内:庄野宿「白雨」三重県鈴鹿市
広重の東海道で印象的なのが、天候表現です。突然の夕立、雪に覆われた峠道、強風に耐える旅人など、自然の厳しさも美しさも描かれています。
これは、実際に街道を歩くと避けられない要素でもあります。だからこそ、現代の街道歩きと重ねて見ると、絵のリアリティがより伝わってきます。
浮世絵『東海道五十三次』を順番に解説!
歌川広重 「東海道五十三次 品川 日之出」
歌川広重『東海道五十三次』内:金谷宿「大井川遠岸」静岡県島田市
歌川広重『東海道五十三次』内:見附宿「天竜川図」静岡県磐田市
歌川広重『東海道五十三次』まとめ
歌川広重の代表作である『東海道五十三次』の詳細をご紹介しました。
浮世絵を通して街道や宿場町の様子がうかがえます。
実際に行って見比べてみるのも面白いかもしれませんね。
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