今回ご紹介するのは長野県(信濃国)に設置された信濃国分寺。奈良時代の741年に聖武天皇によって、全国に60以上建立された国分寺のひとつです。千曲川から一段上がった東山道近くにあったとされており、昭和38年から46年にかけて大規模な発掘調査が行われました。
国分寺は現在の学校や図書館、劇場などが複合した公共施設のようなもの。国分寺には僧寺と尼寺の2種類がありますが、その両方が完全に発掘された例は全国でも数が少なく、たいへん貴重な史跡であるといえます。
信濃国分寺とは?をテーマに信濃国分寺周辺を歩いた様子をまとめました。
信濃国分寺とは?現長野県上田市
東山道沿いに設置された国管轄のお寺
信濃国分寺は東山道沿いにあったと推定されています。奈良時代に整備され、現在も全国にその史跡を残す五畿七道。そのうちのひとつ、東山道は奈良(都)から秋田県(出羽国)や岩手県(陸奥)までをつないでいます。
国分寺には僧寺と尼寺の2種類があり、信濃国分寺にはそれぞれの遺跡が隣り合って発掘されています。僧寺国分寺と尼寺国分寺の南側には、東山道が東西を突っ切るように走っていたとされています。
目的は「国の鎮護」
信濃国分寺を含め、国分寺が建立された目的は「国の鎮護」。疫病除けや五穀豊穣の願いが込められているそうです。「国」はそれぞれの国を示し、「分」は「〇〇のため」という意味があったとみられています。
信濃の国分寺は交通の便がよく、当時の役所(県庁)のような役割を担う「国府」が近かったこと、さらに水火の害に遭いづらいことなどを理由にこの地が選ばれたと推定されています。ちなみに国府の正確な場所はつまびらかになっていませんが、上田市の神科台地と、常田の信州大学繊維学部敷地周辺から史跡が発掘されています。
平安時代中期には律令制の崩壊とともに衰退
創建時の信濃国分寺は、938年に起こった平将門の乱により焼失したとされています。尼寺はしばらく存続しましたが、約300メートル北方の現在の地に地域が移転し、その後は平安時代中期には律令制の崩壊とともに衰退していきました。
僧寺は一段上がった場所に八日堂信濃国分寺として再建され、今日まで大切にされています。
信濃国分寺跡には資料館
信濃国分寺跡には現在、信濃国分寺資料館があります。なかなか見応えのある展示でしたが、中はほとんど撮影禁止でした。国分寺周辺の長い歴史を時代ごとに解説しています。今回参照した資料もこちらで購入しました。
信濃国分寺資料館
所在地:長野県上田市国分1125
開館時間:8:30〜17:00
定休日:水曜日・祝日の翌日 (水曜日にあたる日はその翌日も休館)
入館料:大人250円
公式HP:https://museum.umic.jp/kokubunji/
信濃国分寺の面影を感じる公園
信濃国分寺資料館のとなりには信濃国分寺史跡公園があります。奥にはしなの鉄道線がありますが、どうやら僧寺跡と尼寺跡の真ん中を突っ切るように走っているようです。
現在の信濃国分寺へ行ってみよう!
信濃国分寺史跡公園から県道141号線を渡ると、八日堂 信濃国分寺の看板と仁王門が見えてきます。僧寺と尼寺が衰退した後、段丘を上がった場所に建立された八日堂信濃国分寺は現在でも地元住民に親しまれています。
ちなみに県道141号線は地図で見ると江戸時代に整備された「北国街道」であるとされていましたが、実際に歩いてみると八日堂信濃国分寺前の道(下写真)の方がそれらしく見えました。静かで雰囲気のある良い道です。
八日堂信濃国分寺の三重塔は、室町時代中期に建てられた現存する最古級の三重塔です。源頼朝が善光寺参拝の折に発願されたという伝説も残っているとか。国の重要文化財に指定されています。
交易と信仰の場所として八日堂縁日の市も開催され、今でも「八日堂」の俗称で親しまれています。毎年1月7,8日には「八日堂縁日」が開催され、厄除けのお守り「蘇民将来符」やだるまなどが頒布されています。
1585年の上田合戦により三重塔以外焼失した信濃国分寺。八日堂信濃国分寺の旧本堂が建立されたのは、江戸時代になってからのこと。現本堂の再建には発願から33年を要し、1860年に竣工しています。上田藩主や千石氏、松平氏の援助もあり、三重塔の改修・旧本堂の再建・旧地蔵堂・旧観音堂・鐘楼の建設等が行なわれ、寺域が整備されました。
信濃国分寺では現在2種類の御朱印がいただけます。通常御朱印のほか、中部四十九薬師霊場の第一番札所の御朱印もあり、同じ国分寺では飛騨国分寺も札所になっています。
「信濃国分寺」まとめと参照資料
今回の記事は信濃国分寺資料館にて購入した本を参考にしました。興味のある方はぜひ訪れてみてくださいね。全体の所要時間は1時間ほどのショートトリップでしたが、上田には北国街道の街並みや上田城跡公園など古道・歴史好きにも楽しめるスポットがたくさんあるので、ぜひゆっくり訪れてみてください。