古代の街道や地名に、「国分寺(こくぶんじ)」を見かけることはありませんか?
例えば東京都国分寺市は、武蔵国分寺があった場所です。
今回はそんな「国分寺」がいつ、誰が、何のためにつくったのかを分かりやすくご紹介します。
▼長野県の信濃国分寺はこちら!
国分寺とは?国の運営するお寺
国分寺とは奈良時代(741年)、聖武天皇によって全国に60箇所以上も建立された寺院です。
「国」はそれぞれの国を、「分」には「〇〇のため」という意味があり、地方の官寺(かんじ=国の運営する寺)でした。
国分寺には七重塔とお釈迦様の像をつくるように命じられました。
当時の国にひとつつずつ設営されており、それぞれ僧寺と尼寺に分けられています。
実は現代の学校や図書館、劇場や公民館のような役割も果たしていたようですよ。
ちなみに現存している国分寺はなく、その遺構がわずかに残っているのみです。
簡単に言うと、国がつくった公共施設!
国分寺を建てた理由は?国家鎮護のために建立された
国分寺を建てたのは、「鎮護国家(ちんごこっか)」のためです。鎮護国家とは仏教の思想をもって国の災いをしずめて、守ろうとする考え方のこと。
当時の日本は飢饉(ききん)や疫病が広がっていたため、そんな不安を解消する狙いもあったかもしれません。
国分寺はどんなところに建てられた?
国分寺を建てる場所にはいくつか条件がありました。
国分寺建設場所の条件
・交通の便が良い
・災害が少ない
・南向きの土地
・人地のから離れている
・国府に近い
国分寺には僧寺と尼寺の2種類があった!
国分寺には僧寺(そうじ)と尼寺(にじ)がありました。
僧寺の総国分寺は奈良県の東大寺、尼寺の総国分寺は同じく奈良県の法華寺です。
僧寺と尼寺の違いは、その名の通り性別。僧寺は男性のため、尼寺は女性のためのお寺です。
全国にあった国分寺一覧
国分寺は関東地方から九州地方まで、60箇所設置されました。以下がその一覧です。
畿内
山城国分寺 | 京都府木津川市加茂町例幣 |
大和国分寺 | 奈良県奈良市雑司町 |
河内国分寺 | 大阪府柏原市国分東条町 |
和泉国分寺 | 大阪府和泉市国分町 |
摂津国分寺 | 大阪府大阪市天王寺区国分町 |
東海道
伊賀国分寺 | 三重県伊賀市西明寺 |
伊勢国分寺 | 三重県鈴鹿市国分町 |
志摩国分寺 | 三重県志摩市阿児町国府 |
尾張国分寺 | 愛知県稲沢市矢合町 |
三河国分寺 | 愛知県豊川市八幡町 |
遠江国分寺 | 静岡県磐田市見付 |
駿河国分寺 | (推定)静岡県静岡市駿河区大谷 |
伊豆国分寺 | 静岡県三島市泉町 |
甲斐国分寺 | 山梨県笛吹市一宮町国分 |
相模国分寺 | 神奈川県海老名市国分南 |
武蔵国分寺 | 東京都国分寺市西元町 |
安房国分寺 | 千葉県館山市国分 |
上総国分寺 | 千葉県市原市惣社 |
下総国分寺 | 千葉県市川市国分 |
常陸国分寺 | 茨城県石岡市府中 |
東山道
近江国分寺 | (推定)滋賀県甲賀市信楽町黄瀬・牧(紫香楽宮跡内裏野地区) (推定)滋賀県大津市野郷原・神領(瀬田廃寺跡) (推定)滋賀県大津市光が丘町(国昌寺跡推定地) |
---|---|
美濃国分寺 | 岐阜県大垣市青野町 |
飛騨国分寺 | 岐阜県高山市総和町 |
信濃国分寺 | 長野県上田市国分 |
上野国分寺 | 群馬県高崎市東国分 |
下野国分寺 | 栃木県下野市国分寺 |
陸奥国分寺 | 宮城県仙台市若林区木ノ下 |
出羽国分寺 | (推定)山形県酒田市城輪 (推定)山形県鶴岡市平形国分 |
奈良「東大寺」は総国分寺!
総国分寺であった奈良県の東大寺は、大和国国分寺を前身としています。
東大寺は仏教思想をもって国を護る役割を果たすと同時に、仏教の教えを研究したり、学僧を育成したりする役目も持っていました。
国分寺とは?まとめ
全国に遺構が残る「国分寺」とは何かについてご紹介しました。
当時の公共施設のような役割を果たしていた国分寺。
現在はほとんど残っていませんが、その遺構を辿ってみるのも面白いかもしれません。
▼街道用語のノミチ記事はこちら
- 宿場町・街道用語解説
本陣とは?江戸時代の宿泊施設の意味と役割を分かりやすく解説
江戸時代、日本全国に広がった宿場町には「本陣(ほんじん)」という特別な宿泊施設がありました。 本陣は一般の宿泊所とは異なり、武士や幕府の役人など、身分の高い人々のために設けられた特別な宿です。 この記事では、江戸時代の交 […] - 宿場町・街道用語解説
江戸時代の交差点!「追分(おいわけ)」とは?意味と歴史を分かりやすく解説
日本の歴史の中で、江戸時代の街道は重要な役割を果たしました。 その街道の中でも、特に「追分(おいわけ)」と呼ばれる場所は、旅人にとって欠かせない分岐点でした。 この記事では、追分とは何か、なぜ重要だったのか、そしてその歴 […] - 宿場町・街道用語解説
覚えておきたい街道用語20選|宿場や関所の意味をわかりやすく紹介
日本各地を結ぶ街道は人々の生活や文化に欠かせない存在でした。 街道は物流や人の移動、参勤交代といった重要な役割を果たし、現代にもその名残が各地に残っています。今回は、そんな「街道」に関する20の基本用語を初心者にもわかり […] - 宿場町・街道用語解説
「五畿七道(ごきしちどう)」の歴史と役割とは?古代日本の行政区分を探る
日本の歴史において、五畿七道は行政や交通の重要な基盤として機能していました。 五畿七道は、奈良時代に確立された行政区分であり、交通網としても整備されたもので、現在の日本の都道府県のルーツにもつながっています。 本記事では […] - 宿場町・街道用語解説
日本の有名・主要な街道一覧|歴史と旅の楽しさを探る
日本各地に広がる街道は、歴史や文化を語る上で重要な役割を果たしてきました。 江戸時代に整備された五街道や古代からの重要な交通路が残り、今でもその足跡を辿ることができる観光地として多くの人に親しまれています。 本記事では、 […] - 宿場町・街道用語解説
「北国街道」とは?どこからどこまで?その歴史と宿場町一覧をご紹介
江戸時代に江戸と金沢(北陸地方)を結ぶ街道として発展した「北国街道(ほっこくかいどう)」。 この街道は、江戸と日本海側を結び、多くの人々や物資が行き交いました。 特に、宿場町と呼ばれる休憩所や商業の中心地が街道沿いに点在 […]